令和6年度「産学協創チャレンジ研究開発事業(企業ニーズ型)」では、下記の研究開発課題を実施します。(4件)
プレス機を使用した「新生面結合」による熱エネルギーを使用しない接合法の研究開発
代表研究者
ユーアイ精機株式会社 代表取締役 水野 一路
シーズ提供者(大学等)
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
研究開発の要約
従来の接合方法は、大きな熱エネルギ―を使用する加熱して溶かし接合する工法が多く使用されている。しかし近年は環境対策のために、接合時に使用するエネルギーが少ない工法が求められている。
当社が2015年より研究をしてきた「新生面接合」は、一般的なプレス加工機で可能な為に新たな投資が少ないだけでなく、接合時に使用するエネルギーは、一般的な溶融溶接やレーザー接合ほど大きなエネルギーを使用しない環境にやさしい接合法である。
本事業では、熱エネルギーを大量に使用する接合に変わる工法として「新生面結合」を提案する。ターゲットとしてメガネ部品の接合,アルミバズバーの接合で使用するために「薄板での接合」と「デザイン性の高い形状で新生面結合」を計画した。
あいち産業科学技術総合センターのシミュレーションによる接合の検証、接合面の観察、ユーアイ精機(株)で新生面結合が可能な金型開発を行う事で、5年後の実用化を目指す。
水素バーナを用いたアルミナセラミックスの脱脂に関する研究
代表研究者
株式会社成田製陶所 燃焼機器営業部 副部長 安田 益雄
シーズ提供者(大学等)
あいち産業科学技術総合センター 常滑窯業試験場
研究開発の要約
セラミックスの焼成において、燃料に水素を用いることは、燃焼排ガスにCO2を含まないため、脱炭素化の実現に向けた選択肢の一つとして期待される。セラミック焼成における脱脂工程は、セラミックス成形体に含まれるバインダーを熱分解し除去させるため、変形や割れなどを生じやすく、時間をかけて昇温したり、所定の温度で長時間保持したりする必要がある。一方、水素はメタン、プロパンなどの化石燃料と比較して、同じ燃焼量で比較した場合、排ガス中により多くの水蒸気を含む。水蒸気は、空気と比較して伝熱性が高いため、セラミックスの脱脂工程においても優位に働くことも期待できる。
本研究では、水素バーナを用いてアルミナセラミックスの脱脂を行い、脱炭素に向けたCO2の削減とあわせて、製品の品質に問題ない脱脂条件の調査、及び水素バーナを用いることによる優位性の有無を確認する。
建設機械のための近接構造物接近防止センサの開発
代表研究者
株式会社伊藤美藝社製版所 プリンティングディレクション部 部長 横粂 俊仁
シーズ提供者(大学等)
公益財団法人名古屋産業科学研究所
研究開発の要約
パワーシャベルなどの建設機械は、出力パワーが大きいため、作業中に近くにある構造物に誤って接触してしまうと大きな事故につながり危険である。このために「クッションボール」と呼ばれる簡易な装置が販売されている。この装置は、ゴムボールをゴムバンドで止めたもので、パワーシャベルのバケットなどに取り付けて使用する。「ボール」が作業エリア周辺の構造物に接触した時に、クッションとして作用し、かつゴムバンドからボールが外れることで作業者に接触を知らせる機能を持つ。提案する研究開発では、柔らかな接触部を持つ光学式触覚センサの技術を近接構造物接近防止センサに適用して、構造物との接触情報を建機作業者の近くに配置するスマートフォンに接触の警告と接触情報を提示するセンサシステムの開発を行い、ゴムバンドから外れない場合があるなどのクッションボールの課題を解消する。
生体磁界計測プラットフォームのための高度回路製作
代表研究者
株式会社松栄電子研究所 取締役社長 王 焱
シーズ提供者(大学等)
名古屋大学
研究開発の要約
生活環境で磁気計測は、位置情報や回転運動など広く利用され、また感染予防のためにも非接触技術である磁界検出は応用が期待される。一方、生体電気活動も磁界を発生するが、その利用に関して進展が少ない。
本研究開発、名古屋大学医学部の中山晋介准教授のシーズを受け、常温作動性の感磁部を持つ高感度磁気計測器として、磁気量子制御型(IPA)センサ技術を応用した磁気計測デバイスと、そのプラットフォームとなる計測システムの製作を提案する。IPAセンサでは軟磁性体感磁部中の磁気量子をステップパルス電圧で駆動し、感磁部が暴露される磁界に対応した信号を検出する。期間中には、磁気量子原理と実際の感磁部材料の励起・応答特性の把握に基づき、低ノイズ高感度化した感磁回路を試作する。生体志向の高感度計測プラットフォームとなる計測システムを将来製作するための検証試験を行うと共に、ヒト以外の対象物への利用法拡大を考察する。